
昨年に引続き、平成20年新司法試験選択科目「経済法」論文式問題の解答を記載致します。但し、これはあくまでも解答例の1つにすぎず、模範解答ではありません。
本稿は、甲南法務研究4号(2008年3月)に掲載されたものです
本稿の目的は、独占禁止法が禁止する行為の最も重要な違反要件である「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」という要件(以下、「競争の実質的制限」という。)と「公正な競争を阻害するおそれがある」という要件(以下、「公正競争阻害性」という。)の関係について考察を加えることにある。公正競争阻害性には、競争の減殺、競争手段の不公正、又は(及び)競争基盤の侵害の3つの内容が含まれるとされる(田中寿編著『不公正な取引方法−新一般指定の解説』(別冊NBLno.9)(以下、「田中」という)10−11、100−101頁)が、本稿では、このうち「競争の減殺」に限定して論ずることとする。したがって、本稿の目的は、「競争の実質的制限」と「競争の減殺」を意味する公正競争阻害性との関係について考察を加える、ということになる。
本稿は、前稿「公取委の審判廃止は独禁法の命取り=消費者の利益脅かす懸念」の元となった原稿です
競争ルールの基本を定める独禁法は、市場経済体制を支えるインフラストラクチャーの中核であり、経済成長やイノベーションを促し、一般消費者の利益確保を究極の目的としている。したがって、短期的な利害や特殊利益を反映する政治に動かされることなく、中長期的に軸のぶれない頑健な執行体制を持つことが不可欠である。公取委が独立行政委員会として組織されているのはこのためである。独禁法見直し論議で取り沙汰されている公取委の審判制度廃止は、近い将来、独禁法の命取りとなる大きな危険性を孕んでいる。審判制度は、公取委を独立行政委員会たらしめている最大の根拠であり、審判制度廃止は、公取委を独立行政委員会から担当大臣を長とする通常の行政機関へとアクセルを踏ませる大きな一歩となる。公取委が通常の行政機関となれば、独禁法が短期的な利害や特殊利益を反映する政治に動かされることになる。
本稿は、時事通信社発行「時事トップ・コンフィデンシャル」平成20年2月5日号に掲載されたものです
競争ルールの基本を定める独占禁止法は、市場経済体制を支えるインフラの中核であり、経済成長やイノベーションを促し、一般消費者の利益確保を究極の目的としている。従って、短期的な利害や特殊利益を反映する政治に動かされることなく、中長期的に軸のぶれない頑健な執行体制を持つことが不可欠である。公正取引委員会が独立行政委員会として組織されているのはこのためだ。独禁法見直し論議で取りざたされている公取委の審判制度廃止は、近い将来、独禁法の命取りとなる大きな危険性をはらんでいる。
昨年に引続き、平成19年新司法試験選択科目「経済法」論文式問題の解答を記載致します。但し、これはあくまでも解答例の1つにすぎず、模範解答ではありません。
現行指針に追加・変更を加える行為・条項につきましては、追加・変更理由の説明を行う必要があると思われます。そうでなければ、意見を述べることは困難であると思われます。
たとえば、「特許を利用させないようにする行為」が追加されていますが、それは、このような行為が現実に独占禁止法上ないし競争政策上問題(以下、「問題」とのみいう。)となっているからなのでしょうか、あるいは近い将来問題になると考えられるからなのでしょうか。現実又は近い将来に問題になるというのではなく、理論的にあり得ると考えられたからなのでしょうか。 >>続きはこちら
米国反トラスト法の下では、カルテル(ここでのカルテルという言葉は、単に、共同行為ないし共同行為による取引制限ということを指すのに過ぎず、それ自体悪であるという価値評価をふくむ言葉として用いられていません)は、ハードコアと非ハードコアとに区分されています。近年、EC競争法の下でもこの2分法に倣っているようにみえます。その意味では、この2分法が国際的スタンダードであるということができるかもしれません。それでは、日本の独禁法の下でも、ハードコア・カルテルと非ハードコア・カルテルとを区分する必要性と有効性があるのでしょうか。日ごろから、この点に若干の疑問を感じています。そこで、今回は、この点に検討を加えることとしたいと思います。
最近では、敵対的買収は珍しくありませんが、鉄鋼業界で世界第1位のMittal Steel(以下、「M社」という。)による第2位のArcelor(以下、「A社」という。)の敵対的買収は、世間を驚かせました。M社は、オランダに本拠を置く世界最大の鉄鋼会社であり、A社は、ルクセンブルグに本拠を置く欧州最大の鉄鋼会社であります。両社の統合は、粗鋼生産量で世界第3位の新日鉄の3倍超となる大型買収となります。
今後、つれづれなるままに日暮らし硯に向かい、適宜、独禁法に関連する話題を提供いたしたく、今回は、平成18年度新司法試験選択科目「経済法」論文式問題の解答を試みてみました。もっとも、これは、解答例の1つにすぎず、他にいくつもの解答例があり得ますので、当然のことながら、模範解答ではありません。