最近、公取委は積極的にカルテル・入札談合を摘発しており、調査のための立ち入りが頻繁になされています。
このような状況下、課徴金減免制度に対して根本的に誤解をしているケースがあることが判明しました。基本的なことですが、この点について誤解したままであると課徴金の減免申請の機会を失うばかりか、場合によっては、弁護士の場合は弁護過誤、取締役の場合は善管注意義務違反を問われかねませんので、下記の点を指摘させて頂きます。
−誤解1−
課徴金減免の申請は調査のための立ち入り後も可能である
課徴金減免の申請は原則として調査開始日前を前提としておりますが、調査開始日以後であっても課徴金減免の申請者が立ち入り当時において3社に満たない場合であれば、たとえ調査開始日以後であっても課徴金の減免申請は可能です。
一般的には、立ち入り時点において実際に3社が申請したかどうかが把握できていないのが通常かと思われます。従いまして、まず、立ち入りが行われた時点で課徴金減免の申請を行うべく対応すべきです。
調査開始日以後の課徴金減免申請の要件としては、
@ 調査開始日以後、公取委で定める期日(調査開始日を含め20日間)
A 既に公取委に把握されている事実に係るものを除く
というものです。
Aの要件については、立ち入りがあった以上、既に公取委に提出した資料などは含まれませんが、その他にも「営業者担当者の証言を整理して、カルテルの合意に至る経緯、合意内容、実施状況の詳細を説明する報告資料を作成、提出」した場合であったとしてもこの要件を満たしますので(諏訪園貞明編著「平成17年改正独占禁止法」80頁)、このような報告書が作成可能であるか直ちに検討すべきです。
−誤解2−
課徴金減免の申請は「自白」とは異なる
この点についてかなりの誤解があるようです。確かに違反行為に対する制裁的性格を有する課徴金を減免するわけですから、一般的には「自白」と同様の取られ方をするのはやむを得ないものと思われます。
しかしながら、課徴金の減免の申請に関して法律で定めている要件は、
「当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出」(独禁法7条の2第9項1号)
に過ぎません。
この「当該違反行為」について、実際に「違反」であるか否かは調査が終了し、かつ、最終的な法的評価が行われるまで確定できないのです。存在する事実とこれに対する法的評価は別のものです。従いまして、仮に自身は独禁法違反行為を行っていないと考えていたとしても課徴金の減免の申請を行うという選択肢は十分に考えられますし、これを排除する理由はありません。
誤解の中には課徴金減免申請をしたら一切異議をとなえることができなくなるのではないかと思い込んでいる場合もありますが、そのようなことはありません。自身が報告した事実以外の事実の存否や法的評価については争うことは制限されていません。
また、独禁法の規定の中に課徴金減免申請を行ったことによって、将来、申請者の行動を制限する規定(例えば、独禁法59条2項の違反行為の不存在の主張の制限規定のようなもの)は存在しません。
−誤解3−
20日の計算の仕方
調査開始日以後の申請は立ち入りの日を含めて20日ですが、この20日の計算については、「行政機関の休日に関する法律」の第1条1項に掲げる日の日数は参入しません。
すなわち、土、日、祝日等は含まれませんので、実際は1ヶ月程度の余裕があるのが通常です。
* なお、上記事項も含め、現在、弊所で、
「 独禁法違反行為発覚時の対応 −立ち入り調査前後になすべきこと− 」
という小冊子を作成中で、間もなく完成予定です。
1/1